《秒で終わるポリッシュ》を目指して、ラップを削ってみた話
「秒で終わるポリッシュ」を目指して
「もう少し、早く磨けたらいいのに」
そんなふうに思いながら、ここ1〜2ヶ月ほど、ポリッシュの工程を少しずつ工夫してきました。
使うダイヤモンドパウダーの粒度や量、押し当て方などをいろいろ試す中で、スピードは徐々に上がってきたものの、「秒で終わる」というレベルにはまだ届いていません。
試行錯誤を続けるなかで、いつも使っているラップの中央と外側に、わずかな段差ができていることに気づきました。
この段差のせいで、石を当てる角度が微妙にズレていたのかもしれない。
そこで今回、ラップの表面を削り直してみることにしました。
この作業は、海外の研磨グループなどで “resurface” と呼ばれていて、使い込んで凹凸ができたり、傷が出やすくなったラップを、砥石や旋盤などで平らに整え直す工程です。
よく使っているラップと、これまで試したこと
使っていたのは、8インチのBA5T Lap。
内側には100,000番(10万番)のダイヤモンドパウダー(ポリッシュ用)、外側には8,000番(8千番)(プレポリッシュ用)を塗布し、デュアルラップとして使用しています。
使い始めてから約1年半。2〜3日に1回の頻度で、サファイアを中心に多数の石を研磨してきました。
これまでに、10万番の量を増やしたり、8千番の塗布量を減らしたりと、少しずつポリッシュの改善を試みてきました。
その効果もあって、以前ほど角度のズレは気にならなくなってきましたが、それでもわずかな違和感は残っていました。
4つの方法を試してみた
① 包丁用の砥石(2時間)
最初に使ったのは、手元にあった包丁用の砥石。
「3枚の板を交互に擦り合わせるとフラットが出せる」という話を思い出し、2種類の砥石とラップを順番に擦り合わせながら作業しました。
段差は少しずつ改善されましたが、完全に平らにはなりませんでした。
② 焼結ラップ(2時間)
次に、300番と600番(どちらも粗め)の焼結ラップを使って、同様に擦り合わせる作業を試みました。
金属の焼結体にダイヤモンド粒子が埋め込まれていて、砥石よりも削る力が強めです。
…ただ、試した直後に石に細かな傷がつくようになりました。これはやらない方が良かった!
③ 再び砥石(1時間)
異物を取り除こうとして、もう一度砥石で表面を整えてみましたが、大きな変化は見られませんでした。
④ トリムソーブレード(10分)
最後に試したのが、トリムソーのブレードを使って表面を直接削る方法。
以前、海外の動画で見たことを思い出してやってみたところ、わずか10分ほどで段差がほぼ解消。
見た目も手触りも変わって、感触としてはかなりフラットになりました。
サンドペーパーで整える手入れ
普段は、ポリッシュを終えたあとに、小さなアクリル板に巻きつけた400番のサンドペーパーで、ラップの中央から放射状に軽く整えています。
この作業では、表面に細かな筋を入れておくことで、ダイヤモンドパウダーが乗りやすくなる「スコアリング(Scoring)」の効果もあります。
ただ、アクリル板が小さいため、ラップ全体の段差までは整えきれていませんでした。
今回の削り直しのあと、トリムソーでできた円を描くような細い筋の影響で、最初はポリッシュに筋が出ることもありましたが、何度かサンドペーパーでなじませたことで落ち着いてきました。
整えたあとの変化
削ったあとのラップで、数個のサファイアを研磨してみたところ、はっきりとした変化を感じました。
一番の違いは、ファセットのエッジまで自然にラップが当たるようになったことです。
以前は、外側がわずかに高くなっていたせいで、ファセット全体が均一に当たるまで、ポリッシュにかなり時間がかかっていました。
今はその待ち時間がぐっと減り、全体が一度に当たる感覚が戻ってきました。
「秒で終わる」とまではいきませんが、ラップに乗せている時間が短くなりました。
面全体がスッと磨けるようになると、作業のリズムも自然に整ってくる感じがします。
こちらはresurface前に仕上げたウンバサファイア。やや広めのテーブルで、エッジまで磨き上げるのに時間がかかるデザインでした。
resurface後にカットしたこちらの石では、面全体がすばやく当たり、ポリッシュがスムーズに進みました。
記事で紹介した2点は、現在出品準備中です。
準備が整い次第、この記事にもリンクを追加しますので、また覗いていただけたらうれしいです。
やってみた感想と今の手応え
今回は、いつも使っているラップの表面を削り直してみた記録でした。
段差のせいで角度がほんの少しズレていたのかもしれない…という仮説から始まって、砥石、焼結ラップ、トリムソーといろいろ試した結果、思った以上に変化がありました。
日頃からサンドペーパーで手入れはしていたので、正直「そこまで変わらないかも」と思っていましたが、やってみると、やはり違いがありました。
ファセットの端まで自然に当たるようになり、面全体が一度に磨ける感覚が戻ってきたのは大きな収穫です。
今回の作業が正解だったかどうかは、しばらく使ってみないとわからない部分もありますが、今のところ手応えはありそうです。
「秒で終わるポリッシュ」までもう少し…という気配が見えてきたのが、ちょっとうれしいところでした。
試した工程まとめ(記録用)
※これはあくまで今回の試行記録です。おすすめというより、「こういう流れでやってみた」という共有メモとしてご覧ください。
- 使用ラップ:BA5T Lap(8インチ)
- 使用期間:約1年半(2〜3日に1回ペース)
- 表面の削り直し手順:
- ① 包丁用砥石(2時間)
- ② 焼結ラップ 300番 / 600番(2時間)
- ③ 再度砥石(1時間)
- ④ トリムソーブレード(10分)
- 普段の手入れ:400番サンドペーパーを小さなアクリル板に巻きつけ、中央から放射状に軽く整える(ポリッシュ後)
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このシリーズでは、ポリッシュ改善に関する試行錯誤をまとめています。
撮影機材
ただいま試行錯誤中!石の写真はすべてLEDの照明を使って撮影しています。