クラウンから?パビリオンから? 研磨のアプローチとその違い

宝石を研磨する際、クラウン(上部)から研磨を始めるか、パビリオン(下部)から始めるかは、研磨士の好みによって分かれます。私は研磨を始めた頃、クラウン側からカットする方法を採用していました。その後、パビリオンから研磨する方法も試しましたが、当時はクラウンからの方が感覚的にやりやすく感じていました。

しかし、昨年USFGのコンペティションの準備をしていた際、改めてパビリオンからの研磨を試したところ、特にクッションカットのような複雑な形状のルースを短時間で綺麗に仕上げやすいことに気づきました。

今回は、パビリオンからの研磨アプローチを採用した2つのモンタナサファイアをご紹介します。

モンタナサファイア 0.323ct “Tessellation 12 (F)”

デザイナー:Arya Akhavan

ファセットダイアグラムはこちら > https://www.gemologyproject.com/wiki/index.php?title=Akhavan_-_Tessellation_12_(F)

このルースはロッククリーク(Rock Creek)産のオールドストック原石を使用し、Arya Akhavanの“Tessellation 12 (F)”のデザインでカットしました。

このデザインは、淡めの色合いの石と特に相性が良いため、意図的に淡い原石を選択しました。

パビリオン側から研磨を進めたことで、プレフォーム(Preform、研磨前の大まかな成形)の段階では見つからなかった微細なクラックやインクルージョンを早い段階で発見できるという利点も実感しました。パビリオンの研磨中にインクルージョンをすべて削り落とし、最終的にルーペクリーンのルースに仕上がりました。

ロッククリークのオールドストックらしい濃いブルーとカラーレスが光の反射によって混ざり合い、透明感のある爽やかな水色に仕上がりました。偶然、同じデザインでカットした下のモンタナサファイア 0.493ct “Tessellation 12 (F)”とほぼ同じ色味になったため、アンマッチのペアとしても楽しめます。

※このルースのみUV蛍光性があります。

ご購入はこちら > https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-0323ct-tessellation-12-f/97

モンタナサファイア 0.493ct “Tessellation 12 (F)”

デザイナー:Arya Akhavan

ファセットダイアグラムはこちら > https://www.gemologyproject.com/wiki/index.php?title=Akhavan_-_Tessellation_12_(F)

USFGのコンペティションでは、ファセットエッジ(Facet Edge、隣接するファセットの境界線)が光らず、目立たない仕上がりになっているかが審査のポイントになります。これまでは、どのようにすればファセットエッジが目立たなくなるのか試行錯誤を重ねていましたが、このルースで、クラウンのファセットエッジをかなり抑えることができました。

ファセットエッジを目立たなくするには、ファセットをシャープに研磨し、丸みを帯びないように仕上げることが重要であると気づきました。これまでの約2倍の時間をかけて慎重に磨くことで、より理想的な状態に近づけることができました。

こちらのルースは、引退された研磨士のご夫妻から譲っていただいた原石をカットしました。偶然、上のモンタナサファイア 0.323ct “Tessellation 12 (F)”とほぼ同じ、透明感のある水色に仕上がったため、同じデザインながらサイズ違いのアンマッチペアとしても楽しめます。

ご購入はこちら > https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-0493ct-tessellation-12-f/98

今回の気づき:研磨のアプローチの選択が仕上がりに与える影響

今回、パビリオンからの研磨アプローチを採用したことで、いくつかの大きな気づきがありました。

1. プレフォーム段階では見えなかった微細なクラックやインクルージョンを、より早く発見できる

→ パビリオン側から研磨を進めることで、石の内包物の影響を早めに判断できるため、よりクリアなルースに仕上げやすい。

2. ファセットエッジを目立たなくするためには、より丁寧な研磨が必要

→ USFGのコンペティション基準を意識した研磨では、ファセットがシャープに整うまで時間をかけることが重要。

3. 研磨の順序を変えることで、デザインの完成度を向上できる

→ 今回のアプローチを今後の研磨にも活かし、より高品質なルースを仕上げていきたい。

研磨の方法を見直し、異なるアプローチを試すことで、新たな発見があるのはこの仕事の面白さのひとつです。今後も最適な研磨方法を模索しながら、より美しいルースを生み出していきたいと思います。

撮影機材

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ルースの制作点数を増やすため、動画をお休みしています。ご不便をおかけします。

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