モンタナサファイアの研磨|カットの角度による発色の違い




カットの角度を変えることで、発色や輝きがどのように変化するのかを検証しました。前にカットしたことのあるBob Kellerのデザイン『Simple Jack』を使用し、パビリオンとクラウンのバランスを調整しました。
ファセットダイアグラムはこちら > https://usfacetersguild.org/faceting-diagram/simple-jack/
前回の記事はこちら > https://www.raralab.jp/gemdiary/240321-colors-and-angles
今回は、パビリオンの角度を43.0度に設定し、発色の変化を検証しました。
この調整により光の反射パターンが変化するため、元のデザインの見た目を維持するようクラウンの角度も適宜調整しました。Gem Cut Studioを活用し、輝きを損なうことなく、カット全体のバランスを維持しました。
前回と今回の角度比較
- P1(パビリオン):43.0° → 43.0°
- C1(クラウン):33.63° → 36.2°
- C2(クラウン):29.33° → 31.6°
研磨後のモンタナサファイアは、淡い色合いながらも、発色がより均一になりました。
その一方で、輝きの質が変わり、やや落ち着いた印象になりました。
モンタナサファイア 0.412ct “Simple Jack”|透明感のある淡いブルー



今回の研磨では、100Kのダイヤモンドパウダーを低速で使用し、オーバーカット(Overcut、意図した角度より研磨しすぎること)を防ぎながらミートポイント(Meetpoint、隣接するファセットの交点)を正確に整えました。
これにより、従来よりも短時間で仕上げられ、ファセットエッジ(Facet Edge、隣接するファセットの境界線)の美しさが向上しています。
色はほぼカラーレスですが、自然光の下ではわずかに水色を感じることがあり、落ち着いた透明感のある輝きを楽しめます。



また、UV蛍光性があり、10倍ルーペで観察すると成長線(Growth Line、宝石が形成される過程でできる層状の構造)が微細に浮かび上がる特徴があります。
淡いブルーの輝きが魅力的なモンタナサファイアになりました。シンプルながら計算されたファセット(Facet、宝石の研磨された平面)デザインが光を美しく反射します。
ご購入はこちら > https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-0412ct-simple-jack-mod/99
モンタナサファイア 0.317ct “Simple Jack”|ブルーとグレーが交差する絶妙な色合い




特にテーブルのポリッシュ(Polish、宝石表面の最終仕上げ工程)において試行錯誤を重ねました。通常、サファイアは劈開(Cleavage、鉱物が特定の方向に割れやすい性質)がなく、方向による研磨のしやすさに大きな差はありませんが、この石は特定の方向では傷が出やすい傾向がありました。
最初にセットした方向では傷が出やすく、90°回転させたところ、音が変わり、スムーズに磨くことができました。
ミートポイントのズレがなく、シャープにカットされたルース。
柔らかいライトブルーですが、自然光ではブルーとグレーが交じり、光の角度によって異なる表情を見せます。
10倍ルーペで確認すると、テーブル中央に3つのインクルージョンがありますが、肉眼ではほぼ目立ちません。
ミートポイントの精度を追求し、細部まで丁寧に仕上げたモンタナサファイアです。
ご購入はこちら > https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-0317ct-simple-jack-mod/100
研磨の方針と今後の調整について
パビリオンの角度調整によって、淡い色のモンタナサファイアの発色がより均一になりました。ただし、輝きの質にも影響を与えるため、今後の研磨では発色と輝きのバランスをさらに考慮していく予定です。
また、ガードルを軽く磨くと研磨時間が1.5倍ほどかかることがわかりましたが、細くカットすることで肉眼では違いがほとんど感じられなくなったため、今後のルースでは基本的にガードルの研磨を省略する方針です。
研磨に関する情報は、英語圏の資料が充実しており、検索に役立ててもらえるよう日英併記を取り入れています。研磨に関心のある方が、より深く学ぶ際の参考になれば幸いです。
撮影機材
ただいま調整中!照明は高演色のLEDを使用しています。動画もお休みしているので、ご不便をおかけします。